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【寺院向け】お布施のキャッシュレス化をどう考える~賛成の意見
寺社仏閣側から見る反対意見
寺院においてお布施とお賽銭をキャッシュレス化することには、多くのメリットがあるとこちらで伝えました。⇨【寺院向け】デジタルトランスフォーメーションという選択肢②
しかし寺院がキャッシュレス化を進めることによるデメリットも、把握しておかなければなりません。
「宗教」という分野には性質的にそぐわない
「寺院」という立場でキャッシュレス化をとらえようとするとき、そこには寺院ならではの特異性があることが分かるはずです。
寺院は、「心のよりどころ」「仏様と向かい合い、己の心とも向かい合うところ」という性質を持ちます。物を売り買いする場所ではなく、祈りを捧げ、内省し、仏様を思うところです。
僧侶の説法は「買う」ものではなく、賽銭箱に入れるお金も何かの対価ではありません。
また、現在は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあってなかなか難しい面はありますが、宗教は基本的には「対面」「対話」大切にします。
そのため、キャッシュレス化は宗教の場にはそぐわないとして、京都仏教会は異論を唱えています。
このような考え方を持つのは、寺院ばかりではありません。参拝をする人、檀家となっている人・ご家庭からも聞かれる言葉です。
防犯面での問題も指摘されている
「キャッシュレス化によって、賽銭泥棒などのリスクが抑えられること」はすでに述べた通りです。
ただ、だからといって、「キャッシュレス化をしさえすれば、すべての犯罪は防げる」とは決していえません。
キャッシュレスシステムを導入したことにより、個人情報漏洩の危険性が上がるのではないかと危惧する声も上がっています。
また、寺院をはじめとする宗教関係の施設の場合は、「お布施とお賽銭をしたところがどこであるか」が第三者に知られてしまうことによって、その人が信じる宗教が何であるかまで分かってしまいます。日本では信教の自由が認められていますが、これらが制限されてしまうのではないかと考える向きもあります。
お布施とお賽銭のキャッシュレス化は、寺院にとって大きな決断となるでしょう。そこには常に、「宗教というものの性質」と「利便性と感染症対策」の2つを秤にかけなければならないという問題が残るからです。
お布施とお賽銭のキャッシュレス化をするべきか、それともせざるべきかの決断は、最終的には各寺院の決断にゆだねられます。ただ、始める前には、「キャッシュレス化をするメリット」「キャッシュレス化をするデメリット」の両方を知ったうえで、よく検討したいものです。