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【寺院向け】
デジタルトランスフォーメーションという選択肢①
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寺院は、昔から人の心に寄り添う存在でした。人と対話し、人の魂を慰め、人の平安を祈ることは、寺院の存在理由のなかでも中核を成すものだといえるでしょう。
このような性質を持つ寺院において、デジタルトランスフォーメーションはそぐわないもののようにも思われます。しかし現在では、この新しいシステム・概念を取り入れようとするお寺も出てきています。
その理由について解説していきましょう。
寺院におけるデジタルトランスフォーメーションとは
寺院におけるデジタルトランスフォーメーション(「デジタル・トランスフォーメーション」「DX」とも。デジタル技術を使って人の生活を良くしようとする試み。以下ではDXと表記)は、主に、信徒様名簿の管理や法要のオンライン予約、オンライン法要・葬儀の実施などのかたちをとります。
また、バーチャルでの寺院参拝やバーチャルでのお墓参りができる環境を整えることも、DXの一環だといえるでしょう。
この「寺院におけるDX」は、新型コロナウイルス(COVID-19)下ということもあり、しばしばメディアに取り上げられます。しかしその取り上げられ方は、多くの場合、「参拝する側」「信徒側」からの意見です。
では、寺院側からこれを見たときはどうなるのでしょうか。
寺院側からみたDX、先例をみる
1617年に建てられた「築地本願寺」は、DXに本格的に取り組むお寺としてよく知られています。
寺院にカフェを併設するなどして「入りやすいお寺」を目指している築地本願寺では、信徒様の管理にまずパソコンを導入して「顧客管理」の基礎を作りました。その信徒様の名簿をもとに、「そろそろ法要の時期です」などのように個別にお便りを出すことで、お寺に足を運んでいただく回数を増やしたとされています。
またこの試みは、「来年以降の参拝者」を増やすことにも役立ったと語られています。1000人にダイレクトメッセージを出したとしても、その1000人すべてが参拝に訪れてくれるわけではありません。しかしそのなかの10人に1人が参拝をしてくれればさらにそのデータを作ることができますし、翌年にはまたそれ以外の人が訪れてくれることが期待できます。これによって、「参拝をしてくれる人のデータ」を積み上げていくことができたのです。
加えて、同寺院では先に挙げたオンライン法要ももちろん執り行っています。またこれに伴い、パソコンのレンタルサービスも行っています。
このような取り組みはメディアでも大きく注目され、テレビなどでも取り上げられました。