オリジナル
檀家離れを食い止めるたために
檀家さんの「不満の理由」を知る
現在は、昔に比べて宗教離れが進んでいるといわれています。
ここでは檀家離れの実情とその理由について解説していきます。
寺院離れは確実に進んでいる
宗教離れ・寺院離れが進んでいるといわれている現在ですが、その実情を高野山大学密教文化研究所の「人口減少社会における地方寺院経営の現状―高野山真言宗和歌山宗務支所を事例としてー」が分かりやすくまとめています。
このデータでは、ここ20年間における檀家数の増減数について取り上げています。それによれば、「減少した」と答えた寺院が約66パーセントにも上り、「増減なし」が全体の約27パーセント、そして「増加した」と答えた層はわずか約7パーセントにしかすぎないということでした。さらに、「減少した」と答えた層のうちの約12パーセントが「檀家数が40パーセント以上減少した」としています。
なおこのデータでは、減少の理由として、「後継者がいなくなった」で1位であり、続いて「引っ越し」が2位に入っているとしています。
少子高齢化や宗教離れだけが、檀家離れの原因ではない
檀家離れの理由を模索しようとするとき、私たちは、「少子高齢化」「ライフスタイルの多様化」という分かりやすい理由に帰結しがちです。そして上記のデータが示すように、これは決して間違いではありません。
しかし檀家離れの理由はこれだけではありません。
全日本仏教会がまとめたデータによれば、檀家離れが懸念される「菩提寺に満足していない人」の不満の理由の1位に、「お布施が高いこと」が入っているということです。また同データでは、不満の理由の2位として「金銭が絡むときにしか連絡がない(少ない)」がランクインしていて、3位に「僧侶の不誠実さ」が入っています。
檀家さんの数が減れば、それだけ寺院を支える経済基盤も脆弱になります。そのため、1件あたりのお布施を高く設定しなければならないという事情はあります。ただこのような状況であるのにも関わらず、「金銭が絡むときにしか連絡をしない」ということであれば、これは大きな問題です。檀家側から見れば、「傾聴や指導の役割を寺院側が果たしていないのに、お金だけ要求してくる」ということになるからです。
「菩提寺に満足している人」に目を向けると、この不満点はより明確になります。菩提寺に満足している人が挙げた「満足の理由」のトップ3は、
- 僧侶が誠実である
- 僧侶が誠意ある対応をしている
- 僧侶が親切である
だからです。
見方を変えれば、檀家さんの数が減っていくなかでもご僧侶が適切な対応をしていればある程度檀家離れを食い止めることができるということですし、檀家が離れる理由のひとつとして寺院側の不誠実さがあるといえます。
寺院にとって大きな痛手となる檀家離れを避けるためには、寺院側の意識改革もまた求められるのです。
出典:
公益財団法人全日本仏教会「仏教に関する実態把握調査(2021年度)報告書」
https://www.jbf.ne.jp/wp-content/uploads/site211/files/pdf/bukkyoureport2021.pdf
高野山大学密教文化研究所「人口減少社会における地方寺院経営の現状―高野山真言宗和歌山宗務支所を事例としてー」
https://www.koyasan-u.ac.jp/laboratory/pdf/kiyo32/32_ikemoto.pdf