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お賽銭・お布施をキャッシュレス化するメリット
葬祭のデジタルトランスフォーメーションその2
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は、「お金の支払いや管理」にも影響を与えました。
オンラインで買い物をする人が増えたこともあり、キャッシュレスの利用者が増えたのです。そして寺院や神社もまた、このような流れと無関係ではいられません。
ここでは、「キャッシュレスの普及と、お賽銭・お布施のキャッシュレス化」について解説していきます。
※下記の「お賽銭・お布施」には、「初穂料」なども含みます。
キャッシュレス決済の比率は30パーセント程度、需要は高い
現金を利用しない「キャッシュレス決済」の利用率は、年々増えていっています。
経済産業省が2021年の8月27日に出したデータによれば、日本のキャッシュレス支払の比率は29.7パーセントと、3割近くに及びます。年間で85000兆ほどのやり取りが、キャッシュレスによって行われています。
また、株式会社インフキュリオンがとったデータでは、「クレジットカードは全世代の77パーセントが利用していて、Felica型電子マネー(交通系カードなど)も58パーセント程度に利用されている」となっています。
「そうは言っても、実際にキャッシュレス決済を使っているのは若い世代だけだろう」と思う人もいるかもしれません。しかしクレジットカードの利用率は、世代が上の層ほど多く、60~69歳に至っては88パーセントにもなっています。また、Felica型電子マネーの利用率も、16歳~39歳までは60パーセント以下であるのに対し、40歳以上ではすべて60パーセントを超えています。
そのため、「年齢が高い人ほどこれらのサービスを利用している」という状況になっているのです。
キャッシュレスが多く利用されるようになった背景として、「新型コロナウイルス(COVID-19。以下では『コロナ』と表記する)」があります。
「コロナの普及をきっかけとして、キャッシュレス決済を利用することが増えた」と答えた層は20パーセント近くになっているというデータもあります。
このようなデータを見ていくと、今やキャッシュレス決済という方法はどの世代でも等しく利用しているものであり、また今後も増えていくと予想されるものであるといえるでしょう。
出典:
①経済産業省 商務・サービスグループキャッシュレス推進室「中間整理を踏まえ、令和3年度検討会で議論いただきたい点」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/pdf/2021_001_04_00.pdf
②PRTIMES(株式会社インフキュリオン)「QRコード決済の利用率が全年齢層で昨年から10%以上増加し、54%と過去最高を記録2020年から2021年にかけて消費者の生活行動におけるデジタルサービスが定着化(決済動向2021年4月調査)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000031359.html
③ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社「コロナ禍での支払いやお金の管理に関する調査コロナ禍で生活様式に変化があったことのトップは「キャッシュレス決済で支払うことが増えた」
https://www.visa.co.jp/about-visa/newsroom/press-releases/nr-jp-210831.html
お賽銭・お布施はキャッシュレスで払える? メリットと統計
こういった時世であることを考えれば、寺院のお賽銭・お布施をキャッシュレスで行うという発想が出てくるのはごく自然なことです。
フランスの教会では「キャッシュレスのアプリを取り入れたところ、献金額がアップした」と答えています。またキャッシュレスは、無人の状況でも賽銭泥棒にあう危険性もありません。また2022年の1月17日からゆうちょ銀行では「硬貨を入出金するときには110円以上の手数料をかける」としました。これは細かいお金がお賽銭・お布施として入れられる寺院・神社にとっては大きな負担です。
この「お賽銭・お布施をキャッシュレスで捧げる」という考え方は、参拝をされる方にもメリットが大きいといえます。小銭を持ち歩く必要がありませんし、入出金の手数料もかからないため「気持ち」であるお賽銭・お布施を満額受け取ってもらえます。また、「コロナが小銭を介して起こる可能性は低いとはいえ、できるだけリスクを減らしたい」と思う人にとっても適した方法だといえます。
実際のアンケートでも、お賽銭・お布施をキャッシュレスで行うことに関しては多くの人が指示しています。
たとえば、「デジタルトランスフォーメーション(以下“DX”とする)で、お札やお守りをキャッシュレスで入手できるようになったら、それを利用するあるいは利用したい」と考えている人の割合は、実に48.1パーセントにも上ります。
また、「参拝料をこの形式で支払う」に関しても47.4パーセント、お布施に関しては43.8パーセント、お賽銭に関しては37.0パーセントがこれを支持しています。
この「寺院にお納めする金銭を、キャッシュレスでやり取りをすること」を支持している人は若い層に多く、20代(菩提寺あり)ではいずれの項目もすべて50パーセントを超えています。また、70代の人であっても、4人~3人に1人が上記のやり方を支持しています。
もちろん、「宗教的な儀式にキャッシュレスはそぐわない」「お賽銭を入れて、合掌して、礼をするという行動そのものに意味がある」と考える人もいることでしょう。
教会の事例を紹介しましたが、これは「同教会内にある文化財の保護のための費用を献金する」という性質も持つものです。対して寺院・神社の場合は、「お願い事をするためのもの」という価値観を持って、お賽銭を入れる人も多いと思われます。
このため、「すべてのお賽銭・お布施をキャッシュレスで払えるようにしなければならない」とはいえません。
ただ寺院が参拝者に寄り添うものであることを考えるならば、多くの参拝者が望む「キャッシュレスという決済方法」を選択肢の一つとして考慮してみてもよいのではないでしょうか。