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①「直葬」という選択肢に対して、寺院はどう向き合うべきか?
~データ編〜
葬儀のかたちは多様化しており、そのなかのひとつとして「直葬」があります。
直葬とは、「宗教者(僧侶や牧師など)を呼ばず、限られた身内だけで、火葬場でお別れをする方式」をいいます(※ただし、ご家族が希望すれば宗教者を呼んで、火葬炉の前で読経などの宗教的儀式を行ってもらうことはできます)。
この「直葬」という形態について、人はどう思うのか、そこから読み取れることは何なのかを解説していきます。
菩提寺の有無に関わらず、直葬に対しては好意的な印象を持つ人が多い
「仏教に関する実態把握調査」の報告レポートによれば、菩提寺の有無に関わらず、直葬に対して好意的に受け止めている人が多いということです。
「今の時代、直葬でも仕方がないと思う」としている人の割合はどちらの層でも70パーセント近くになっていますし、「直葬の方が効率的で良い」と考えている人もまたいずれの層でも55パーセントを超えています。さらに、「そもそも葬儀は不要である」としている人の割合も、菩提寺の有無に関わらず、30パーセント程度もいます。
また、直葬に対するイメージのなかでもっとも多いのは「費用が安く済むこと」であり、これも菩提寺の有無に関わらず43パーセント前後となっています。「家族や親族に迷惑をかけたくない」「無駄がなくて良い」とする意見も非常に多く、ほとんどの人が直葬という選択肢を歓迎していることがわかります。
菩提寺を持っている人のなかには反対意見を抱く人もいる
一方、直葬に対してマイナスの印象を抱く人も多く見られます。
「味気ないような気がする」と答えた層は、菩提寺を持たない人の場合は4人に1人程度の割合ですが、菩提寺を持っている人の場合は3人に1人以上になっています。
また、「しっかりとした葬儀を挙げてやりたい」と考える人の割合は、菩提寺を持たない人の場合は5人に1人程度ですが、菩提寺がある人の場合は3~4人に1人程度となっています。
もう一つ注目してほしいのが、「本音を言えば、直葬というかたちは取りたくない」という人の割合です。
菩提寺を持っている人はこう答えた人の割合が2人に1人以上となっています。
つまり、この新型コロナウイルス(COVID-19)流行下においては「直葬は止むを得ない」と考える人や直葬を好意的にとらえる人は多いものの、そのすべてが諸手を挙げて直葬を「歓迎」しているわけではないということです。
ではこの事実を踏まえて、寺院はどのように働きかけていくべきなのでしょうか。
次号ではそれについて解説していきます。