コラム No.061 寺院墓地のありかた①〜「どこまで受け入れるか」を考える〜

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寺院墓地のありかた①

「どこまで受け入れるか」を考える

「埋葬の形態」が多様化していっている現在においては、寺院墓地もまた、方向転換を考えるべきときが来ているのかもしれません。ここでは、「令和の時代において、寺院墓地は何をどのようにどこまで受け入れるか」を考えていきます。

寺院墓地が「方向の見直し」を求められている理由

もともと寺院墓地は、「仏教の信徒であり、自宗派の信者であり、先祖代々そのお寺を支えてきた人(=檀家)」を積極的に受け入れてきたといえます。

しかし現在はこの在り方も変わりつつありますし、変わらなければならないと考える向きも増えています。なぜなら宗教への帰属意識が薄れていったり、宗教観が多様化していったり、ほかの埋葬方法が数多く提案されるようになってきたりしているからです。

江戸時代においては檀家制度が法律によって定められていて、寺院と檀家の結びつきは非常に強固でした。しかしこの法律が撤廃されましたし、「生まれ故郷以外の土地に生き、そしてそこで生涯を終える」という人も増えてきたことにより、寺院と檀家の繋がりは薄くなっていっています。

また信教の自由が認められたため、仏教以外の宗教を信じたり、無宗教主義を取ったりする人も見られるようになりました。

かつ埋葬方法自体も、「海洋葬」「樹木葬」「民営墓地や公営墓地の利用」「(寺院ではない)納骨堂の利用」など、非常に多様化しています。

「宗教・宗派へのこだわり」について考える

檀家が少なくなってきたこと、寺院墓地以外の利用者が少なくなったことから、経営難に陥る寺院も増えてきました。たとえば浄土真宗本願寺の寺院のうちの40パーセント以上が年収300万円以下であるとするデータもありますし、ほかの宗派でも同じく厳しい数値が出ています。

このようなことを踏まえて、「寺院墓地だが、より広くほかの人へも門戸を開こう」とする試みもみられています。

寺院墓地は、

  1. 生前の宗教は問わない
  2. 在来仏教の信者ならば、宗派は問わない
  3. その寺院の宗派に限る

のいずれかのスタイルをとっています。そのなかでも現在は1と2の在り方が主流であり、3の在り方はほとんどみません。もし自寺院が3の形式あるいは2の形式を取っており、かつ「支えてくれる信者」の不足に悩んでいるのであれば、1の形式に方向転換することも視野に入れなければならないかもしれません。

埋葬形態の移り変わりはよく言われていますが、この「埋葬形態の変化」は利用者だけに影響をもたらすものではありません。寺院側にとっても大きな影響をもたらすものなのです。

出典:PRESIDENT Online「4割が年収300万円以下」お寺経営の厳しい現実」
https://president.jp/articles/-/29974?page=3