コラム No.062 寺院墓地のありかた②〜「どのような形態で眠ってもらうのか」を考える〜

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寺院墓地のありかた②

「どのような形態で眠ってもらうのか」を考える

前の記事では「移り行く『埋葬形態の変化』『宗教観への変化』『ライフスタイルの変化』を寺院墓地はどのようにとらえるべきか、寺院墓地は宗教的な視点に立った場合どこまでの人を受け入れるべきか」を考えていきました。

この記事では、「これからの寺院墓地は、申込者にどのような形態で眠ってもらうのか」の考えの基本と、その選択肢を提案していきます。

現在人気を博している「樹木葬」という選択

墓地の運営に携わる人であるのなら、「樹木葬」という言葉は一度は耳にしたことがあるでしょう。

これは一般的な墓石を持たず、木の下に眠る形式です。ちなみに日本で初めて樹木葬霊園を開いたのは、知勝寺というお寺です。

樹木葬の場合は、墓石を持つことがないため一般的な墓地・墓石の購入費用に比べて安く済みます。また樹木葬は、「祭祀継承者がいなくても、そのまま土に還ることができる」「檀家になる必要もない」というメリットがあり、広く受け入れられています。

寺院側から見ても、「だれも世話をすることがなくなった墓がいつまでも墓地にあり、連絡してもなしのつぶてである」という状況を避けられる形式でもあります。

現在の寺院墓地の在り方そのものを変えることはなかなか難しいものでもありますが、寺院墓地の運営形態のひとつとして、「寺院墓地の樹木葬」があることも考慮しておくべきでしょう。

ライフスタイルの多様化、どこまでを受け入れるか

かつてお墓は、「先祖代々のもの」「その一家のもの」という考え方で作られていました。しかし「LGBTの人や、結婚せずに過ごす人のお墓」を考える寺院も増えてきています。かつては「一緒に埋葬できるのは、婚姻関係や血縁関係のある人に限る」としていた寺院墓地が、婚姻関係にない人同士や、継ぐ人がいない人の受け入れに積極的に動き始めているのです。現在は寺院墓地であっても、同性カップル同士で眠ることのできるところもあります。

また仏教においては、動物を「畜生」ととらえていますが、近年はペットを家族同様に愛し、一緒に眠りたいと考える人も増えてきています。彼らのために、「ペットと一緒に眠れるお墓」を提供している寺院墓地もあります。

このような変化は、「寺院墓地のすべてが受け入れ、すべての寺院墓地が肯定しなければならないもの」ではありません。当然それに反対する意見もありますし、その反対意見が「いけないもの」というわけではありません。寺院墓地の在り方に正解はないのです。

ただ移り変わりゆく世相にあわせて、その結論がどのようなものになるかはさておき、「自寺院がどのようにあるべきか?」を「考えること自体」は放棄してはいけないでしょう。