コラム No.066 「連絡が取れないお墓」に対して、寺院は何ができるか

オリジナル

「連絡が取れないお墓」に対して、寺院は何ができるか

埋葬方法が多様化していっている現在は、「菩提寺にある先祖代々のお墓に埋葬する」という形式を取らない人も増えてきました。このこと自体は決して悪いことではありません。しかし、「先祖代々の墓への埋葬を嫌った結果、面倒を見る人がいなくなってしまった」という墓が残るのは、寺院側にとって大きな痛手です。このような墓を抱えている場合、寺院はどのように対応すればよいのでしょうか。

寺院側による「一方的な撤去」は認められていない

「もう10年以上だれもお参りしていない墓がある」「雑草が生い茂っていて、非常に状態が良くない墓がある」という状況は、寺院側にとって非常に悩ましいものです。

しかしどのようなお墓であっても、原則として、寺院が無断でこれを撤去することはできません。墓地を利用するにあたり、寺院側と使用者側では契約を結んでいるはずだからです。

そのため、このようなお墓をどうにかしたいと考えるのであれば、寺院側は適切な処理を行わなければなりません。

まず真っ先にするべきことは、「そのお墓の所有者や管理者、継承者を探すこと」でしょう。寺院名簿にそれらの情報が記されているのなら、それに従って連絡をします。それがない場合は戸籍から連絡先を調べることになるのですが、この段階に踏み切るならばプロの手を借りましょう。

それでも連絡がない場合は、違う方法での連絡を試みる

「住所を調べて連絡したがなしのつぶてである」といった場合も、すぐにお墓を撤去することはできません。

そのため、次の段階としては官報への掲載が必要となります。さらに、それと合わせて、お墓に立札や張り紙を行い、期間を決めて「○年の○月○日まで連絡がなければお墓を撤去します」と告知します。またこのときは、記録に残すために、写真などもとっておきましょう。

ここまでしてもなお相手からの連絡が1年以上に渡ってない場合は、寺院側から改葬許可申請を行うことができます。これは市町村の役場に提出するもので、この申請が認められれば、寺院はようやくお墓の撤去を行うことができます。

言い方を変えれば、ここまで煩雑な手続きをしない限りは、無縁墓となった墓も撤去できないわけです。

「墓じまい」という言葉は、「お墓を利用する人」の立場でよく使われる言葉です。しかし寺院側にとっても、無関心でいられない話題です。これを行う場合は、手順をよく確認して、間違いのないように進めましょう。