コラム No.073 「消失の可能性」は決して他人事ではない~お寺の抱える危機とは 

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「消失の可能性」は決して他人事ではない

お寺の抱える危機とは

信仰のよりどころであるお寺は、その課税の方法の特殊性もあり、しばしば「安泰だ」と誤解されがちです。

しかしこのような思い込みは非常に危険です。

寺院全体の3分の1が、消滅の危険にさらされている

慶応技術大学大学院経営管理研究科がまとめた「仏教寺院の尊属に関する調査:京都のある寺院と繋がりの深い寺院を中心に」では、非常に衝撃的なデータが示されています。

この研究結果によれば、宗教法人全体のうちの35.6パーセントが消滅の可能性のある寺院だということでした。

ここでは在来仏教を中心としてそれぞれの宗派で「現在どれくらいの寺院が、消滅の可能性を持っているか」も調査しています。

この設問において30パーセントを切ったのは「真言宗豊山派」「浄土宗」「真宗大谷派」「時宗」の4つだけであり、しかもこの4つも4寺院に1寺院は消滅の可能性があるとされています。

特に消滅可能性が高い寺院が多い宗派としては「高野山真言宗」が挙げられ、これはなんと45.5パーセントもの寺院が存亡の危機に立たされています。それ以外にも「曹洞宗」が全体の4割を超える寺院が消滅の危機にあるとしています。

なおこれはコロナ前の2019年に出された研究であり、本文中にもコロナの記載はありません。そのため現状は、この論文が出されたときよりももっと厳しくなっていると考えるのが自然です。

危機感をもって対応をしていくことが重要

このような「寺院の消滅の可能性」を高めている原因となっているのが「葬式などの簡略化」です。

家族葬という言葉が市民権を得たことで、昔ながらの大きな葬儀を行うご家庭は減ってきました。お布施の額は基本的には葬儀の規模によって左右されますから、このような変化は、お寺にとって非常に大きな痛手です。

また、祭祀関係の支出は、多少の増減はあるものの、年々右肩下がりに減少しています。たとえば平成14年では家計のうちの19パーセント程度が祭祀費用として使われてきていましたが、平成21年には17.5パーセント程度に落ち込んでいます。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で葬儀はより小さくなりましたから、この「祭祀費用の支出」のパーセンテージも、現在ではもっと落ちていると予想されます。

上記の「葬儀の規模の縮小化」「祭祀支出が減ったこと」には、個々の死生観の変化も大きな影響を与えています。ほかの宗教を信じる人も増えてきましたし、「墓じまい」というかたちでお寺にあった墓地を片付ける人も増えてきました。また、「どの宗教かと言われれば仏教だが、宗教への帰属意識は低いため、法事などでもご僧侶は呼ばない」とする家庭も見られます。

このような状況は、お寺を継ごうとする後継者の数の減少にもつながります。昔とは異なり、「寺の長男に生まれたからには寺を継ぐべきだ」という考え方を持つ人ばかりではなくなっていますし、「そもそも檀家も少なく入ってくるお布施も少ないので、後継者になっても経済的な面で困ってしまいそうだからお寺を継がない」と考える人もいるでしょう。

少子高齢化問題を抱えていて、葬儀のかたちや死生観が変わっていっている現在において、その原因のすべてを完璧に解消することはまずできません。

ただこのような現状を踏まえたうえで、「新しいアプローチ」を試みていくことは非常に重要です。現在も多くの訪問者を受け入れているお寺では、より気安く、より足を運びやすい寺院であるようにと考え、新しい技術であるDXなども積極的に導入していっています。

出典:

慶応技術大学大学院経営管理研究科「仏教寺院の尊属に関する調査:京都のある寺院と繋がりの深い寺院を中心に」
file:///C:/Users/kilie/Downloads/KO40003001-00002019-3576.pdf